奇妙な、まったく奇妙なデート 〜「抒情的間奏曲」より


 ー僕たちは互いに敏感に感じ合った。
  それでも申し分ない仲だった。
  僕たちはよく「夫婦ごっこ」をして遊んだ。
  それでもついぞ喧嘩はしなかった。
  僕たちは一緒に騒いだりふざけたり、やさしく抱き合ったりキスしたりした。

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彼女はいろいろ俺に教えてくれた。
日曜日というのに一人で映画館に入っているのは、恋人がいないのかそれとも今日のデートが突然のキャンセルか、そのどちらかだろう。どちらでもないとしても、共通点は、“淋しい”ということだ。“退屈” ということだ。そしてその映画がアニメだということは、毎日の生活に疲れているということだ。そう、これだけわかれば結構だ。俺は十分に相手を知った、幼馴染み以上に・・

彼女はムッツリと黙り込み、笑うことさえしない。俺は、ゲラゲラ笑ってやった。無理にも笑ってやった。そんな俺に、少しは興味を持つたのか、時々盗み見している。ここで断っておくが、彼女は俺の左隣である。あまり意味のある状況説明ではないが。

俺は知らぬふりをして、なおもゲラゲラ笑った。その内、彼女もとうとう「クスッ」。こうなればこっちのもの だ。もう後は、アレヨアレヨという間に、ゲラゲラ笑い出した。
彼女は、小さいカメが自分の利点を駆使して大きいブルドッグを負かしている場面では、涙を流しながら喜んだ。えぇっ、これは相当の重症だ。相当の痛手か、心の圧迫があるらしい。「可哀相に、慰めてやらねば。」そう思った。

俺は静かに彼女の笑い声を聞いてやった。俺に気兼ねなく、彼女は笑った。俺は、その笑い声と共にその吐息を感じ、快感を覚えた。素晴らしいものだ。背筋がゾクゾクする。俺は、彼女が笑うことをやめるまで、じっと笑いたい衝動を抑えた。

俺の一番恐れた時が来た。幕が静かに降り、照明がつく。お別れだ。
さようなら、さようなら愛しい人。俺は君の顔も見ずに帰るょ。さようなら。
俺は、彼女の名も知らず、姿形も知らず、これでお別れだ。それでいい、デートは終わりだ。
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  ーとうとう最後に、子供らしい思いつきで
   森や谷間でかくれんぼをして遊び、
   あんまり上手に隠れたものだから
   とうとう見つからずじまいになってしまった!