たそがれへん

                                                        
それは 雨のふる月曜日

人気のない 浜辺で
わたしは 夏の落しものを
探して 歩いたの

肩を冷たく 濡らしていく雨でさえ
わたしの心を知っているのに
夏のあなたは 今どこに・・
      
もしもあなたに 逢えたら
言葉なんか いらない
たゞ もう一度 あなたの口づけが
=雨の日曜日=





漁り火の彼方 波の背に揺れる夜光虫

暗い浜辺の 二つの足跡

寄せる波が 少しずつ消してゆく

蒼い月の囁きを 耳にする時

その瞳は 青い炎を燃やす


雲に陰る月 一瞬の光の途絶えに

触れ合う唇 長い夜ならではのこと

その時 その瞳はやはり

青い炎を フラメンコの命に変えて
                       燃やし続ける
                          
                               =漁り火=





青い空

  俺は憎かった

  だから 

  だからこそ 白いペンキを投げつけた

  パァーッと 広がったその白に

         青い空は 驚いていた

   だのに いつの間にか 雲になっていた


白い雲

  俺は憎かった

  だから

  だからこそ 黒いペンキを投げつけた

  バサーッと 覆いかぶさった黒に
        
         白い雲は驚いていた

   だのに いつの間にか 雨になっていた


強い雨

  俺は憎かった

  だから

  だからこそ 赤いペンキを投げつけた

  ペチャッと 居座った赤に

         強い雨は驚いていた

  だのに いつの間にか 太陽になっていた


赤い太陽

  俺は憎かった

  だから

  だからこそ 心臓に斧をふるった

  サァーッと 飛び散る真紅の血

        赤い太陽は驚いていた

   だのに いつの間にか 意識が途絶えていた
                                 =jisatsu=
                                    





吐く息の 凍りし窓辺 暖炉の火 

外には雪が 音のするなり


吐く息の 凍えし手にぞ 伝わりて 

恋しき想ひ なぜに届かぬ



身を縮め 凍てつく指に かけし息

勢ひあまりて 眼鏡ぞくもる
                   =題知らず=





花開く幻の都 その影をふるえる水面に映す

ギターの爪弾きとゴンドラの哀しい叫び声は 水面を刺す

落日がガナル=グランデに洸々と映え そしていよいよ落日!
                                                                =落日=


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