人間の感情には、 形状というものはない。 と同時に、 複雑な形がある。 愛と憎悪━ 相反する感情。 が、ともすれば、 同じ形を見せる。 罵りの中の甘え 労わりの中の軽蔑 友情をも裏切る愛、 世間を敵にまわす愛 幸せを強いる権利はなんぴとにもなく、 幸せを掴む権利は誰にもある。 強い人がいる もう一人 弱い人がいる 形あるものは壊れ、 形なきものは絡み合う。 罵りの中に甘えがあり 労わりの中に軽蔑がある 義理と人情 その板挟み 義憤と憐憫 惻隠の情 |
天国と地獄 HeavenとHell 誉れと恥辱 GloryとShame そして ハレルヤとInferno |
= 人間の感情 = |
michiyoが言った 「養女に出して!」 見透かす父親が答えた 「じゃ、出してやる」 父親の真顔におどろくmichiyo 「うそ、うそ、うそなの」 父親の背中にすがりついた ぼくは すがりつきなんかしない 泣いたりもしない aniの家出 大捜索が始まり 連れ戻される ぼくには出来ない そのまま見捨てられそうで 怖かった 愛を感じられなかった おこぼれ頂戴 と感じていた おねだりの出来ない ぼくだった 嫌われはしないか そればかりを考えていた それが 行動の規範となった aniが目を覚ます いつも 父母が居る ぼくが目を覚ます だれも 居なかった 泣き叫んでも だれも来ない 泣く ことを忘れた ぼくはぼくを 見捨てない 絶望したり しない こころの奥で 自分をなぐさめてきた だけど ひとりぼっちが怖い 不安と焦り が消えない それを 忘れるために書く 自分を見つめながら 書きつづける まさに masturbation そして ぼくが嫌になる 自虐的に 自分をさらけ出す 一日 いや一時間でいい かわいそうな奴 と思って そしてその後 このぼくを 見捨ててください |
= 頼れない = |
世の男どもが 女に求めるものは ただひとつ ただひとつの優しさ 世の女どもが 男に求めるものは ただひとつ ただひとつの服従 為せば成る ―― 為さねばならぬ そこに男がいれば 男の世界 そこに女がいれば 女の世界 誰もいなければ … それでも人の世 赤さびた 古いレール 幾とせ前かに 敷かれたレール 汽車が通って 通って 通る だから 頭頂部が銀色に光る 腹部も底部も ただそこにある 「ゴットン ゴットン ゴットン」 「イタイ イタイ イタイ」 その叫びにだれも気づかない 頭頂部だけが 妙に 銀色に光っている 線路の先に ステーションがあり その周りに家があって となりに家があって そのとなりのとなりに家があって そして人がいて その人のとなりにもまた 人がいて その人のとなりのとなりにもまた 人人人 そしてそれが 人の世 |
= レール = |
物悲しく、淋しく… 夕陽に映える湖水の 泣きゆく雁の姿を映す。 はるかな沖に浮かぶ ただひとりの面影。 偲びては泣き 泣いては偲ぶ。 湖畔の小屋で逢ひし日より 胸の痛みは始まりき。 君、 りんどうの花よりも美しき。 すずらんの花より愛らしき。 幾たび言ひかけしか。 岩に戯れしあの 小舟に乗りし夕暮れ。 思えば懐かしき夢なりき。 過ぎ去りし、 甘きそして苦き、青春の日々。 星の出ぬ夜の最後の 甘きふたりの口づけは まことのことなりしか。 ふたり手をとりて、砂地を走り 涙をこぼしつ、また走る。 許されぬこの世でのふたりの愛。 あヽ、悲しきかな。 あヽ、恨むべきかな。 而して、青春の日々、また甘し。 そして、切なし。 そして今、 湖に立ちし若人の目に 浮かぶは、美しきひとれの少女。 海の涯てへと帰依し朝。 “あなたが好きな……” ふみのひと言も 涙の 若人の胸を痛めしぞ。 湖にひとり立つ若人の姿。 物哀しく、淋しく…… 夕陽に映える湖水の水面。 泣きゆく雁の姿を映す。 そして湖に 夕陽が沈んでいく。 |
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