カコ編

kako!

何年ぶりかの手紙ですね。
気の遠くなるような……それでいて、つい昨日のことのような…

もうお互いに 手紙を交換する年でもありませんし、何年経っても、ちっとも
変わりばえのしないわたしを あなたの前にさらすのもイヤですけれど、
あなたの近況が知りたいんです、何だか無性に。
教えてくれますか…… 

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何年ぶりかで 舞い込んだ訳の分からぬ手紙
ブツブツ言う前に まあ ひと言


  暑中お見舞い
       申し上げます


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元気なようす、安心しました。
いまさら、何の用だ!なんてことは言いません。
永い間、待ってたような気がします。
ボクにしても、何度となく書いた出す宛てのない手紙を
破り捨てたり、燃やしてみたり…。
そしてその青い炎を見ては、ため息をついてました。


 何をどう切り出していいのやら。いま、すごく考えています。
お昼に手紙を読んで、夕食を済ませ、一杯のお茶をすすっている
いまも、考えつづ続けています。

やっぱり君は、少しずつ大人になっていたのですね。
このぼくも、大人になった━成長した、と思ってた。だけど
よくよく考えるに、ただ単に言葉を変えているだけで、
結局は、蒼い中学時代と同じ考えでした。

みんな、ぼくのことを、“変わった、変わった”と言う。そう
顔形は変わったろうさ、が、精神的には何の変化もない。
つい最近までは、すごく変わってきたとぼく自身思ってた。
でも結局のところ、なーんにも変わってなかった。


この間の連休を、ダチの故郷で過ごした。山間(やまあい)のakechi町という所です。
岐阜とaichi と、そして naganoとの県境にある、小さな町です。
すごく空気が澄んでいるところです。夜なんかね、満天に星が(まばた)いてる。
それに、驚いたことに月も赤かった。暖かく感じる月だった。
冷たい、というイメージなんだけどね、月は。

木々の緑や、川の青さも又良かった。小鳥のさえずりも身近に感じたし、ね。
木々の間を透ける太陽光が眩しくて、それであのサングラスをかけた。
 
林を抜けて、茶畑の中に立って、遠くの山々を見た。
真っ青な空もいいし、端っこに浮かんでた積雲も良かった。
全てが綺麗で、ホントに絵だった。一幅の絵画だった。

 山を降りながら、清水の流れを伝っている内に、いつの間にか山と山との間を
緩やかに流れる川になり、大きな魚や小さな魚が
誰に脅かされることなく、悠々としかも秩序正しく泳いでいた。
まるで釣り人の存在を知らないように。

ふと思った。“まだ日本にも古里がある”って。
そう思うと、無性に qshyu に帰りたくなった。
━ボクの生まれ育った町、先生に叱られた学校のある町、
友だちと泳いだ川のある町、レンゲ草畑で転げ回って泥だらけになった町。
懐かしさでいっぱいになった。まふだが熱くなったりした。
そんな自分が、たまらなく可愛く思えた。……へんだネ。

 
 高一から高二にかけて書きなぐった小説のどれもに、セックス描写が入ってる。
好奇心からではあろうが、その描写に問題がある。
“悦び”ではなく“苦痛”として描いていることだ。
地獄に喩えてみたり…まるで気付かなかった。そんな心があったとは。

到底kakoには話せないこと…。

愛 ━ これだ! という形なんか、あるわけない。
愛 ━ どんな状態か、わかるわけない。

唯、“愛してる”と、信じていられるらしい。
唯、信じる為には、愛していなければならない


愛を得るには、まず信頼を勝ち取ること。
信頼を得るには、不断の努力の積み重ね。
猫を被っていようとも、不断の努力で被り続ければ
いつかは猫になれる。

[破綻]

kakoはいま、一人だと言う。
実家に帰るわけにもいかず、ひとり暮らしだ、と。
駆け落ち同然だったの…と、悲嘆に暮れている。

行間に滲み出ている
“逢いたい” という感情。

尻込みしてる、ボクがいる。
男気を出せ! と、叱咤するボクがいる。

でも、でも…
今日のkakoは、ボクの好きなkakoじゃない……