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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 何ということはない。 この俺が 人間失格 だということだ。 もう考えるまい、惨めさがますだけだ。 敗北者はいやだけれども、これ以上の 惨めさは たくさんだ。 ツルゲーネフが、トルストイに与えたことば “汝は 汝の道に かへれ” ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 独立した私の部屋には、CDコンポがあります。 ベッドがあります。冷蔵庫も、洗濯機も、あります。 大変、嬉しいです。 その上に、エアコンさえも取り付けてあるのです。 私は倖せ、なのでしょう・・ でも私は、寒いのです。 全てが整いすぎていて それが為に私は、 人とのコミュニケーションを失くしているのです。 全てが、私の部屋で完結するのです。 私は、いつも寒い思いをしています |
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あなたからのお便り、机の上であたしの帰りを一番待っていてくれたようで、とても嬉しかったです。 でも、なんだか変ね、あなたがあたしのことを「あなた」なんて書いてあるの。 今まで 何十通になるかわからないけれど、初めてみたい。 会わなきゃ、いけないのかしら… あれほどに “会いたい”って思ってたあたしが、今になると… 二人は会うかもしれない。いいえきっと、会うんだわ。 何もかもが全て終わってしまうかもしれないのに。 お部屋の新入生が言うの。 「会わない方がいい! 会って終わりになる人だったら、その人が可哀相よ」って。 こうも言うのよ。 あたしにこうして長い長〜いお手紙を下さること、あなた自身の慰めなのだと思えるから、 あたしはあなたとお別れしちゃいけないんだって… ホントにそう? |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「君は親の決めた人と一緒になって、小さな幸福を 大切にして行く人だ。へたに恋愛なんてしないことだ」 この前ばったり会った高校時代の先輩が そんなこと言ってました。 『お互いが お互いを 必要としない』 今朝からそんな言葉が 頭にこびりついていて 何か変なことを 言い出しそう…… ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ |
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あなたって人は、もう! なんて手紙をくれるのかしら! プンプンよ! まるであたしが出したような手紙を送ってきて。 まるであたしの心の中を見透かしている…… でも、最後のことばだけは あなたの本心なの? 「ぼくたちは サヨナラ を使っちゃいけない」 「サヨナラ なんて、異国語は要らない」 |
心の友だち? 恋人? 一人ぽっちって そんなに 耐えられないものなの? ひとりぽっちって こわい? 家族がいて 片想いでも 恋しい人がいて たくさんのお友だちがいて…… でも あたしはひとりぼっち? 会ったことも 声を聞いたこともないあなただけれど 淋しいとき、悲しいとき、うれしいとき、 いつでも思い出して 安らぐの。 おかしい? 「サヨナラ」を言っちゃいけないのは、ひとりぼっちに なるのが こわいから? 不思議な人ネ、あなたって…… |
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今、ことばを 忘れてしまった…… 今、為す術を 失った…… ただベッドに座り、ぼんやりと窓の外に見入っている 小説を書く気にも なれずに いる kakoに恋したこと 素直に ただただ 嬉しい 自身が男だと いうこと・・・ ただただ うれしい 一生を、一生を、酔いしれる青年でいたい ********************** |
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“恋” そう名付けたいが為の 努力 見つめること わずかな会話の時と 微笑と…… 「まじめにお付き合いを考えるとき、あなたはホントにいい対象です」 ━ 鏡の前で 四苦八苦していたあの人が 「結べる?」って、急に顔を近づけてきた時のこと。 とまどうあたしにはにかんで笑った真っ白い歯が印象的でした。 頼もしさ やさしさ きびしさ… ごく自然に私の心をうずめていく影 “恋” そう名付けたいが為の 努力 今は そのために生きているみたいです 彼はいつも 私を高校生並にしか扱ってくれません。 だから ついつい反抗的になってしまいます。 彼はそんなあたしを反抗期だから…なんて 笑ってすませてしまいます。 でもあたしは 知っているんです。 彼の理性が あたしの感情をくいとめようと努めていることが、 とてもよくわかるんです。 彼の理性と あたしの感情との 競い…… |
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過去は 壊れてしまった 時計 |
Kako! とうとう 別れが来てしまったネ。 桃源から 現世へと 移り住んだんだネ。 “あたしがあなたにしてあげられることがわからない” “…そんなものは ありはしない……” “あなたが好きで必要としているのは手紙の中のあたし” “そしてあたしが好きなのは手紙の中のあなた” “小説や詩を愛しどうしても行動に移せない未熟でかわいい青年” そうかも しれないネ。すべてkakoの言うとおりかもしれないネ。 でもネ、一つだけ言わせてほしい。 kakoだけなんだよ、kakoだけに ぼくは臆病なんだ。 |
恋に恋した kako だったんだね。 それとも ぼくのことが 忘れられなくて…なんてのは… “会っても いいよ” kakoからの 誘いのことば。 でもぼくは京都へ行くことはなかった。 違うよ、今でも kako は 大好きだよ。 でもそれは、いまのkakoじゃない、と思う。 kakoはもう 忘れているのかもしれない。 桃源の地で遊んだkakoを、kakoは忘れてしまってる。 ぼくはkakoの愛らしさを知っている。 もしも誰かが kakoに愛らしさを見つけ出したとしても、 ぼくと同じに kakoの美しさを見つけることはないだろう。 もし万が一にも 誰かが、それを見つけたとしたら ぼくのように愛したらとしたら、 きっときっと、ぼくのように 臆病になるだろう。 |
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