柿と松茸の話
   
木枯らしの吹く日のことです。

ブルブルと震える柿が、栗に話しかけました。 
 
  栗さん、あんたはいいねえ。

イガイガのコートが暖かそうで。

それに、皮のジャンパーを着込み、

さらにその下に渋皮のラクダのシャツだろう。

どうだろう、一枚分けてもらえないかねえ。

あたしときたら、肌襦袢一枚で、寒くてさむくて。
  けっ! 一昨日来やがれってっんだ !!  
   
柿  ねえねえ、聞いておくれよ、松茸さん。

栗さんたら、薄情なんだよ。

「これこれしかじか……」、なんだよ。
松茸  何を生っちょろいことを言ってるんでい。

これきしの寒さが何でえい。

なんだろうよ、グシュグシュに泣きやがって。

まったく情けねえぜ。

俺っちを見ねえ! ふんどし一枚着てないぜ!
   
お囃子音 お後が よろしいようで……


 
  短 歌 と 俳 句
短歌
 
   



俳句
虫のこえ きみの聞きしは 鈴虫か

吾の聞きしは 腹の虫なり

−−−−−−

虫のこえ 連られて詠う 腹の虫
 
 
小 咄  車の走らせ方) 

車で走る時、気を付けよう。

「犬を見たら 進め、猫を見たら 止まれ」

犬は後ずさりするが、猫は飛び出すよ。


狭い道、前方にオバちゃん。

クラクションを鳴らして、注意喚起!

「退いてくれえ!」

あっ! 飛び出てきた。

「バカヤロー!」

「すみません、猫年なもので」

* 昭和時代の お噺なもので。
 

 (ギャフン!

「よお! お前、いつもなんか喰ってるなあ…」

「う、うん。ムシャ、ムシャ……」

「美味いか? …なんだい、それ……?」

「ほしいか」

「欲しい、ほしい。で、何だい?」

「ほしいか」

「うん、欲しい。で、なんだい?」


「くどいなあ! ほしいか、干しイカだよ」

「ギャフン!」

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ギャフン!!

「また、喰ってるう! どうせ、干しイカだろ?」

「いや! モグモグ……口の中には、なし…だよ」

「なしって……食べてるジャン! いいよ、欲しいなんて言わないから」

「梨だよ、君の好きな」

「ギャフン!!」

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ギャフン!!!

「ネエ、カラーテレビ、買ったってえ?」

「う、うん。カラテレビをね」

「へーえ、すごいジャン! 

あんたみたいなビンボー人が、良く買えたわねえ」

「…………」

「なに、これえ!? 空じゃないの!」

「そうさ、カラ(空)テレビさ」

「ギャフン!!!」

   (夕暮れどき

「おいおい、どうしたあ? 

そんなに、あちこちにぶつかったりしてえ」

「うん…俺、酉年生まれでさあ」

* 酉年と、鳥目を引っ掛けた

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アキだモン!

それは、街路樹の枯葉を風が吹き払う、ある日曜日のことでした。

A子は久しぶりに、夏に知り合ったB男に、ばったりと出くわしました。

A子=最近、冷たいわねえ。

B男=…………

A子=電話しても、ルス電だし。たまに出てくれても、メンドーくさそうだしい。
   
B男=…………

A子=ねえ! デートしょうよお。

B男=…………

A子=そう! キライになったのネ……。

    アッシ、なんか、気にさわることしたあ……?

    なんとか、言ってよー!

B男=だって、もう、アキだからなあ。

* アキだ=飽きた に、引っ掛けた

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(スリ)

「親分、スリはどうやるんですう?」

「スリだあ? そんなもの……。

まあ、見てな。丁度向こうから、カモが来るぜ。

そうだ! サングラスをかけて……と」

「お手並みはいけん、しゃっス」

「おっと、ごめんなさいよ!」

「お待ち! この、バカタレが!」

「ああ! お、おっ母さん!」