ぼくは 酔っぱらった |
〜 自問自答 〜
俺 = | 何のために生きてるのかと聞かれても、答えようがない。そうだな、満足のいく文学作品を――文学と限定するするわけじやなく――何かを創り上げたら、死ぬよ。 |
ぼく= | 自殺、ってこと? |
俺 = | かもしれない、違うかもしれない。創り上げる前に、年老いて死ぬかも……? |
ぼく= | じゃ、その時が、この僕の終わりだね。 |
俺 = | 君には申し訳ないが、そういうことになる。 |
ぼく= | 弱ったなあ、それは。“死にたくない!”って、駄々をこねることになるかもしれないよ。だけど、君だけが死ぬことはできないし。僕が生きてたら、きっと君はまた、生き返るだろうし… |
俺 = | ほんとに、申し訳ない。 |
ぼく= | じゃあ、今の内に、青春を謳歌しておくか。その、来るべき日のために。 |
俺 = | ………… |
ぼく= | ふふふ、分かってるよ。それも、いけないんだろう? 君は、ぼくがピエロになろうとするのを、嫌うんだから。君自身がそうだから、かい? ま、いいさ。でも、ひとりの人間がふたつの独立した人格を持ち、双方共にその存在に気付いている、これは、どういうことだろう。 |
俺 = | 俺思うに、誰もがそうだと思うよ。意識するか、しないか、そういうことじゃないかな? |
俺は、書きたい。ただ、黙々と。小説を、詩を、雑文を。 文学こそ我が人生、と感じる俺を、だれも知らない。 夢物語?…いいさ、いいさ…それでも。 とにかく、俺は書きたい。 |
窓の外には、緑の木の上で小鳥がさえずり、その向こうから潮騒が聞こえる。 せまい四畳半の部屋で、ひとつの机に向かい、せっせとペンを走らせる。 誰かに読ませる為でもなく、それでいて、誰もに読んで欲しい、と願いつつ。 ひとり…? ふりむくと、せっせと編物をしている…女… 「お茶でも、飲みます?」 ほほえむ女…… 「ああ、ひといき入れようかな」 そうか…そうなのか… この女のために、俺は書きつづけているのか…… 大きく背伸びをして、また、ふりむく。 俺の影が、おれに微笑んでいる…… |