おふくろの詩(うた)
辺りを闇がすっぽりと包みこみ、
誰もが互いを干渉しなくなった時、
フッと心をかすめる。
━ あの空は、ほんとの空?
宇宙につながる筈のこの空に何かが覆いかぶさり
全ての恵みを奪い去り、
闇が生まれる ━ 生まれていた。
思いを遠くに馳せ、
覆いかぶさる闇を突き破り、
宇宙の中に溶け込んだ時、
脳裏に浮かぶ。
━ 霞のたなびく涯て
赤い月があり、地上で見るよりはるかに大きい。
山の緑、川の蒼、みんなきれいだ!
小鳥のさえずり、せせらぎの音。
林を歩きつづけ、立ち込める陽炎をはらい、
今、花の群生。
遠くの山々を見ても、美しい!
━ 尾根の稜線がくっきり
湧き出る清水を伝い、
歩く、歩く、歩く。
いつか滝となり、ゆったりと谷川へ。



ふっと、思う。
まだ日本にも、ふるさとがあるんだぁ・・


山や川が きれいだ
空気が 澄んでる
赤い月が 頭上で輝いて・・

やっぱり、哀しい
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おふくろのいない 日本
父親の存在が薄れるにつれ
・・・おふくろが 消えていた

誰にも
愛や真を話せない・・


母と言う名の付く女性はいても
おふくろ・・じゃない・・・

ぶっかけ味噌汁ご飯をかけこみ
たくあんを ぼりぼりと 食べさせてくれる
おふくろは いない
いない

いなくなった 日本
おふくろのいなくなった 日本




エッフェル塔の下のため息を
        気まぐれな風はパリの町へ運んだ
コートの衿を立てて急ぎ歩く旅人を
               冷たい風は囃し立てた
今 風は眠っている
                 風は又吹くだろう

流れるシャンソンのメロディーは 
    浮かれた風をグラン=プールへ連れてきた
胸を病む画家達の間を 
              浮かれた風が囃し立てた
セーヌの川に置き忘れられた郷愁さえ 
                風は吹き飛ばしていた




花開く幻の都 
         その影をふるえる水面に映す
ギターの爪弾きとゴンドラの哀しい叫び声は 
                    水面を刺す
落日がガナル=グランデに洸々と映え 
              そしていよいよ朝が!
吹きすさぶアルプスの峰に 
               二つの黒いしみ 雲の上に点々と
朝に輝く雲海の光は 
             アルピニストの背に 強い光を落とす
天に突き上げられた二本の旗 
                  その日 太陽は三つとなった




赤い手が 赤い棍棒で叩き割ったのは 
                          鉄カブト 
 その中から 緑のしみ出る四つ葉のクローバーが 
                         芽生えた
 その朝 枯れた四つ葉のクローバーに 
                         なっていた
時の流れは今 
                     川となりました
銀の皿は流れるのです 
              その上に空を乗せたまま
その夜 空は消えました
           その朝には 太陽が消えました


wail poem